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こちらの文は、日釣振で既に公開された昨年からの外来魚特定に関する内容となっております。
実際のは、この数倍以上の情報量がありますが、今後の対応や方針に支障が出るため部外秘となっていることをご理解のください。
また、外来魚に対する偏見を見直してもらい、バスフィッシングという身近な環境で得られる大切なものを少しでも理解していただくために掲載させていただきました。
・参考 テナガエビの漁獲高上昇

意 見 書

 山梨大学教育人間科学部 ソフトサイエンス教授 池田清彦      

滋賀県は、琵琶湖での外来魚のリリース禁止の条例の根拠として、ブラックバスが琵琶湖の在来種減少の主原因であるとの立場をとっているが、県議会の資料を見る限り、県の主張に科学的な根拠が希薄なように思われる。

県の資料2は、「外来魚の増加と漁獲量の減少との関係」と題されて、図1〜図4までが載せられている。まず一般的な話としては、漁獲量は魚の個体数や現存量の推定のためには原則として使えない事を指摘したい。漁獲量は、魚種の市場価格の高低によって漁獲が左右される等、個体数や現存量以外の要因に支配されるため、本来の個体数や現存量を正しく反映している保証はない。外来魚と在来魚の増減の相関について講じるのであれば、漁獲量ではなく科学的な手法に基づいて、少なくとも5年以上の継続的な固体数あるいは現存量の推定調査を試みた後で講ずるべきであろう。

次に、漁獲量が個体数や現存量の増減を反映しているとの県の主張が仮に正しいとしても、外来魚を在来魚減少の主要因とするには無理があることを指摘したい。ここでとりわけ重要なことは、相関関係と因果関係は全く別のカテゴリーである事だ。これは、科学的なデータを取り扱う際の常識である。図1には1980年からブラックバスが増加したことに伴い、フナの漁獲量が減少したこと、図2には同じくコイの漁獲量が減少したことが示され、フナやコイの減少には、ブラックバスの影響が大きいと結論付けられているが、この結論は科学的な常識からすれば余りにも乱暴である。図3と図4では、ブラックバスが増加しても、ホンモロコとスジエビの漁獲量に関してはほとんど変化がなかったことが示されており、ここでは、ホンモロコやスジエビの減少にはブルーギルの影響が大きいとの結論が付されているが、この結論もまた、相関関係を因果関係と誤読した非科学的な暴論である。

もちろん、相関関係の背後には因果関係が潜んでいる場合もあることは事実であるが、因果関係を推定するには、相関関係以外の傍証が必要であることは言うまでもない。県の資料2には、「ブラックバスの食性」と題する図があり、ブラックバスの胃内容物の分析から、ブラックバスが主に甲殻類と魚類を食することが示されている。2002年9月議会の知事の9月30日答弁として、「ブラックバスの胃からは、ニゴロブナやホンモロコ、ワタカなどの固有種を初めとする在来の魚類やエビ類が、そしてまた、ブルーギルの胃からは、ヨシノボリ等の在来魚のほか、エビ類や魚の卵なども確認されております」とある。

ブラックバスがフナやホンモロコやエビ類を食べるのは事実ではあるが、図3のホンモロコの漁獲量の推移と図4のスジエビのそれを見る限り、1980年以後のバスの増加にもかかわらず、この2種の漁獲量は減少しておらず、1990年以後のギルの増加に伴って著しく減少している。

一方、図1と図2では、フナとコイの漁獲量はバスの増加に伴って減少し、その後ギルの増加が見られたにもかかわらず漁獲量は安定している。

ブラックバスとブルーギルの胃内容物の分析から、前者はフナとコイを選択的に食べ、後者はホンモロコとスジエビを選択的に食べるというのであれば、フナとコイの減少はブラックバスの影響であり、ホンモロコとスジエビの減少はブルーギルの影響であるとの結論には相応のリアリティーが与えられると考えられるが、そうではないのであるから、図1から図4までの外来魚の増加と在来魚の漁獲量の相関は、因果関係とは無関係であると考えざるを得ない。むしろ、漁獲量の相関と胃内容物の齟齬・魚の個体数の増減には他の要因が重要であることを示唆しているように思われる。また、捕食者の胃内容物分析をすれば、被食者が入っているのは当然であって、そのことをもって被食者の減少は捕食者のせいだと主張するとしたら、それは余りにも非科学的であろう。ツバメの胃内容物にトンボが入っていたからといって、トンボの減少はツバメのせいだと結論付けることはできない。

また、資料2には、「琵琶湖の沿岸域における定量的調査で採集された魚類の種別構成比」なる図が載せられているが、わずか10sに満たない漁獲量(ほとんど雑魚であろう)のみから琵琶湖全域の話を構築するには無理があろう。さらに、「ヨシ帯(フナやモロコ、コイ等のコイ科魚類の主要な産卵場)および外来魚産卵場の分布」と題する図には、コイ科魚類と外来魚の産卵場が重なっていることが示されているが、このこと自体は事実であっても、これは外来魚が在来魚の減少原因になっていることを示すものではないことは言うまでもないだろう。

以上、県が示した資料2のデータを見る限りでは、外来魚の増大が在来魚の減少の原因であるとの主張の正しさは裏付けられないと考えざるを得ない。条例でキャッチアンドリリースというバス釣りの文化となっている行為を否定する以上、その前提、すなわち外来魚の増加が在来魚減少の直接的な原因であるとの主張を科学的に検証する必要があるが、現段階ではそれは全くなされていないと考える。

次に、リリース禁止が外来魚の個体数及び現存量の減少に本当に役に立っているのかという、もう少し現実的な問題もある。リリースされた魚の一部は死んでしまうこと、リリース禁止により琵琶湖でのバス釣り人口が減少したことの2点を鑑みれば、条例によるリリース禁止は、外来種の個体数の減少に役に立ったかどうか大いに疑問である。これについても正確な調査を望みたい。

放流禁止はともかく、リリース禁止は条例にはなじまないと私は考える。第一点は、以上述べてきたように、リリース禁止の前提には科学的根拠が乏しく、その効果も実証されていないこと。第二点は、次の理由による。外来魚を減少させることは善だと一応考えるにしても、外来魚を釣ってリリースする人は、(リリースした魚の一部が死ぬ事は間違いないのであるから)何もしない一般人よりもほんの少しだけ善行をしていることは確かであろう。ほんの少しだけ善行をしている人に、もっと善行をしなさいと強制する条例はおかしいと思う。

個人の自由は公共の福祉に反しない限り、最大限守られねばならない。バスのキャッチアンドリリースは、以上の理由から公共の福祉に反すると考えることは難しい。リリース禁止にかかる条件はすみやかに廃止することが望ましい。

※注 上記の図又は資料はリンクしておりません。御了承下さい。

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